光と綿でレーヨン?
絹糸ができるまでを見て来ましたが、大変な時間と手間がかかるのが判っていただけたでしょうか。余りに手間暇がかかることから、絹糸を人工的に作り出すことができないかとの研究が大正時代ころに始まり、大正時代後半から実用化されて行きます。天然の絹糸を正絹(しょうけん)と呼ぶのに対し、人工的につくられた絹糸風の糸を人絹(じんけん)と呼びます。正絹と人絹の両方を混ぜて使った生地の着物もあり、交繊(こうせん)と呼びます。人絹は、100%人口素材かというとそうではなく、植物の繊維質を取り出し、それを糸状に再生したものです。レーヨンとも呼ばれ、植物を再生したものですから、半自然半人口の繊維です。レーヨンという呼び方は、ray(光線)とcotton(綿)を合わせた合成語です。
正絹と人絹・交織
人絹も交繊も、見た目には正絹と全く見分けがつかないのですが、触ってみると違いを感じます。正絹が何とも滑らかな肌触りであるのに対し、人絹・交繊はやや重さがあり分厚い感じです。正絹の着物や帯は、柔らかいので着心地が良く、体にしっくりと馴染み着ていても疲労感が少なく着崩れも少ないのに対し、人絹・交繊は正絹に比べややごわごわする感じがあり、体が締め付けられているように感じ、それでいて着崩れが起きやすく疲労感を感じてしまいます。そんな理由から、正絹の振袖がもっともグレードが上であるとされています。
(写真の振袖は大正時代の正絹振袖です)