模様を引き立てる”地の色”とは
では、模様が何らかの色で描かれるとすれば、その模様を最も美しく見せるベースの色は何だと思いますか。赤でも青でも緑でもありません。それらの色を使ってしまうと、その色と同系色の色は模様を描くのには適しませんから使えなくなってしまいます。模様を最も美しく引き立てる”地色”は、間違えなく“黒”です。黒の地色は、白でも赤でも黄色でも青でも緑でも、とにかくどんな色を使ってもその色を引き立ててくれます。黒地の振袖というと、“地味ではないか…”と思う方も居るかも知れませんが、そんなことはありません。現代の振袖と違い、大正時代の振袖は、上下前後左右ところ狭しと模様を描きましたから、地の色が殆ど見えないようなものもありますし、たまに現れる黒地が模様の色を引き立ててくれますから、何とも上品な豪華さを演出してくれます。
模様を一番引き立ててくれる地色は”黒”だという基本を知った上で、黒地以外の地色を選ぶのは大いに有りですから、ご自分の好きな地色を選ばれると良いでしょう。
模様のバリエイション
振袖を選ぶ際に、色はとても重要なポイントであることには間違いありません。赤という色だけでも何百種類があると言われていますし、黒は無限にあると言われています。大正時代の染料は、強すぎず弱すぎず、地味すぎず派手過ぎない、何とも言えない味わいを持っています。それは見て頂くのが一番でしょう。模様(柄)についてですが、振袖を着るのはお目出度い祝いの場でしょうから、吉祥文様(きっしょうもよう)と呼ばれる、幸運を呼ぶ模様がメインとなります。吉祥文様とは模様の総称的な言い方で、花柄・幾何学模様・唐草模様・松竹梅・鶴亀など、30種類とも40種類とも言われる種類があります。アンティークの振袖にはその吉祥模様が所狭しと描かれたり、和刺繍で表現されたりしています。また、大正時代のアンティーク振袖は、吉祥模様以外の柄にも本当にバリエイションに富んでいます。全面に鳳凰や鶴が描かれている振袖や、琴や琵琶などの和楽器が全面に描かれている振袖や、これぞ大正ロマンと言った幾何学模様が描かれている振袖など、とにかくモダンで洗練された柄ばかりです。是非、その中から自分だけの一点を見つけてみてはいかがでしょうか。