振袖の定義とは
若い女性がひらりひらりと長い袖を揺らしながら、成人式会場に赴く様子は、日本の良き文化としてすっかり定着していますし、1月の風物詩にもなっています。さて、現代人が“振袖”という言葉からどんな様態の和服を連想するかについてですが、人によってそれほど違うことはなく、ほぼ同じイメージの和服を連想するのではないでしょうか。しかし、定義が余りに漠然としていて曖昧なので、少し整理してみようと思います。
“女性用の着物の袖が長いものを振袖という”、多くの方がそのようなごく漠然としたイメージを持っているのではないでしょうか?確かに、現在、袖の短い和服は振袖とは呼びませんが、単に袖が長ければ振袖と呼ぶのかと言えば、必ずしもそうではないようですので、少し丁寧に来歴を見て行きます。
袿(うちき)から振袖へ
服飾学的な分類で見れば、袖が長いか短いかは振袖を定義づける際には関係が薄いようです。現代の和服の原型は平安時代初期にできたようですが、ごく初期には、袖部分の体に近い側も遠い外側も縫い付けていない筒状の形でした。この和服を袿(うちき)と言います。袿(うちき)は袖の部分が縫っていないので、腕が自由に動かすことができ、活動的な作業には大変に向いています。しかし、外気がストレートに入って来ますので、冬場は寒く感じてしまいます。また、袖部分の肌が露出する状態は衣服としては洗練されているかどうかというと確かに改善できる余地がありました。
そのような事情から、袖の手を出す部分より下の方を縫い付ける服がつくられるようになりました。この服を、袿(うちき)に対して小袖(こそで)と言います。さて、小袖は袖の先が縫ってありますから、冷たい外気が流入してしまう対策としてはとても有効でした。しかし、今度は夏場には熱が籠り易くなってしまうという問題が起きてしまいました。特に子供は体温が高いため、服の中に籠った熱を逃がすことを考えるようになりました。
そこで考えだされてのが、袖の体に遠い側の袖口だけを縫い付け、体に近い側の袖口は縫い付けない子供用の小袖です。この小袖だと、それまでの小袖より手の自由が効き、籠った熱も逃がすことができるという訳です。